クレペリン検査は疑似科学?そこから分かる攻略法

内田クレペリン検査

内田クレペリン検査はひたすら簡単な足し算をしてその結果から性格や能力を分析するテストである。学校や企業の採用試験で使われてる有名なテストだ。
僕自身も小学校や中学で受けた記憶がある。公文式に行ってたから計算は得意でクレペリン検査も楽しんで取り組むことができた。でも結果表には性格分析しか載ってなかった。性格なんかより自分の計算能力がどの程度か知りたかったのに。性格分析はまぁ外れてる気はしなかったが、ビシッと言い当てられた気もしなかった。周りの友達には当たってると大騒ぎしてる子もいたけど・・・。これって本当に”当たる”テストなのか???

検査の仕組み

内田クレペリン検査は3つの要素から性格と能力を分析する。それはどれだけ足し算できたかという「作業量」、計算をどれだけ間違えたかの「誤答」、計算をするうちに作業量がどう変化したかという「変化量」。
性格分析で特に重要なのは変化量だ。元々このような作業を人間にさせると特定の作業曲線が得られる。最初はたくさん計算でき、徐々に疲れ、最後は少し回復する。休憩を挟んで2回目をやると計算への慣れと疲労回復から計算量は1回目より多くなるが、やはり徐々に疲れて減っていき、回復することなく終わり。これが一般の人間の作業曲線。発見したのはクレペリン。
一方で普通の作業曲線にならない人間はなんかヤバいんじゃないかと考えて研究したのが内田勇三郎。性格が偏った学生や、交通事故を起こした人や、精神薄弱者は確かに普通とは違う作業曲線を示したという。
そんな理論の元に1930年代に作られたのが内田クレペリン検査。つまり正常な作業曲線を描けないヤバい人を炙り出せるテストだ。
ちなみに正常な作業曲線を「定型」、正常でない作業曲線を「非定型」という。

定型の作業曲線

定型作業曲線
(村上,2005,p186)
これが一般の人が描く定型の作業曲線。1回目はU字を描きつつ減少。2回目は作業量は多いが回復することなく減少。

非定型の作業曲線

非定型作業曲線
(村上,2005,p186)
こちらが問題ありとみなされる非定型の作業曲線の一例。唐突に作業量が上がったりしてる。

検査への批判

生和(1971)はクレペリン検査の信頼性を実験を通して研究した。様々な人にクレペリン検査をさせると5割程度の人しか定型にならなかった。更に同じ人たちに何度もクレペリン検査をさせると非定型になったり定型になったりした。全体として回数を重ねると非定型になる割合が増えていった。一貫して定型になる人は1〜2割程度だったという。クレペリン検査で使う3つの要素を分析すると、作業量と誤答は何度検査してもある程度一定でありその値は信頼できる。だが肝心の変化量は一貫した結果にならず受験者の特性を明らかにする為には精度が足りないことが判明した。
人類のうち5割程度が非定型になり、やればるほど非定型が増えていく恐怖の性格診断テストである。ただし足し算能力はそこそこ高い精度で測れる・・・。

村上(2005)は生和の研究結果を更に分析した。やればやるほど非定型が増えるのはクレペリン検査に慣れて作業量が上がったからだという。テストに慣れてたくさん計算できるようになれば変化量が大きくなる。変化量が大きくなると作業曲線が安定せず、非定型だと判断されるリスクが上がると考えられる。
また既存の心理学の知見から見てもクレペリン検査での性格診断には疑問が残るそうだ。クレペリン検査では作業量の動揺を情緒不安定性と結びつけているが、その動揺がブロッキング現象によるものだとしたら外向性と結び付けないといけないという。つまり外向的な人はクレペリン検査で情緒不安定だと診断されるかもってこと。

簡単に言えば内田クレペリン検査は定型・非定型を分別する精度は低く、その上で性格を無理やり解釈してるから性格診断テストとしては意味がない、らしい。村上に言わせれば「お茶の葉で今日の運命を占うようなもの」。

内田クレペリン検査の対策は「全力でやらないこと」

村上によればクレペリン検査の対策は「一生懸命やらないこと」だそう。作業量は用紙を測って15センチも回答できていれば十分。大学生ならそれくらい余裕でクリアしてるはず。それよりもたくさん計算して作業曲線が安定しないほうがマズい。迂闊にも練習して挑めば非定型になるリスクが高まるのは研究結果が示す通り。

8割、9割の力で検査に臨み、あとは定型だと判断されるのを祈るべし。そもそも検査の精度が低いから半分は神頼みや占いの類だと思っていればいいのだろう。頑張って定型の作業曲線を模倣する手も考えられるが、そんなことを気にすると作業曲線があまりにも少なくなって処理能力のないバカだと判断されるかもね。

批判への批判的検証

とまぁ、批判的に書いてみたが、このような批判に対しても批判的に考える必要がある。果たして村上の批判がトンデモなのか、内田クレペリン検査がトンデモなのか。

とりあえずクレペリン検査に対する他の文献も見てみる。野田(1999)はクレペリン検査の変化量の扱いについて歴史的経緯も交えて検討している。確かに1999年の時点ではクレペリン検査の結果処理が変化量に作業量が影響するやり方で行われているようだ。それに対して作業量に影響を受けない新しい結果処理のやり方が考案されているが現時点でクレペリン検査に採用されているかは分からない。そして昔は作業曲線の判定が直感的な判断により行われていたが、近年は数値を用いた客観的なやり方で判定されているようだ。コンピュータによる解析も実施されつつあるとあるから、今はもう殆ど自動解析になっているのではないかな?分からないけど。
気になるのは生和(1971)の研究が客観的な判定の元に行われていたかどうか。もし直感法で行われていたら、定型・非定型を分別する精度がないという結果が恣意的なものである可能性が出てくる。そこは原著を読んでみないと分からない。

とまぁ、ここまで調べたところで僕は力つきた。ネットで見られる文献だけだと何とも言えない。クレペリン検査の妥当性についての研究もあるっぽいから図書館とかで探したり取り寄せたりすればすぐ解決する気もするが。
根本的な疑問としてクレペリン検査のような作業に人間の特性がどの程度反映されるのかというのがある。異常のある人が非定型を出すのは想像できるが、定型を更に性格によって分類するのは無理な気がするな。学校でやったクレペリン検査では一人一人結構違った結果が出てきたけども・・・。
とりあえず時間ある時により調べる。

参考文献
「心理テスト」はウソでした。
村上宣寛『「心理テスト」はウソでした。』日経BP社、2005
生和秀敏『内田・クレペリン精神作業曲線の検査反復にともなう変化について』心理学研究、1971、42,152−164
(生和は村上からの孫引きです)
野田勝子『クレペリン検査における新PF値の妥当性に関する研究(1) :精神健康度の変化との関連で』名古屋大學教育學部紀要. 心理学 46, 155-172, 1999-12-27

One thought on “クレペリン検査は疑似科学?そこから分かる攻略法

  1. たかじん

    公務員試験では適性検査の名目で本人の能力を測るものとされ、今でも実施されています。
    実際去年受けましたが、「可能な限り全力で遂行せよ」と言われるので、気合入れて計算と記入をしていきます。
    これが厄介で、手先がしびれたりして非定型の谷が一か所くらいは出来てしまう事も有ります。

    で、問題はここから。
    谷が出来るような非定型の場合「人格、性格、精神に問題有り」との診断がおります。手が痺れた等の言い訳は通じません。
    僅差で採用を決める時等は、こんな事だけで採用の成否を測っている部分もあるのです。

    もし、採用試験等で実施が予測される場合は、よーく練習してから受験される事をお勧めします。
    あってはならない事ですが、攻略が可能な適性試験ですので。

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